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ゆっくりとマンションの方向に向かい始めると、路地裏に、扉が大きい小さな店があった。
「こんなお店あったっけ?」
鈴音さんが首をひねる。
ドアの右上に、木製の釣り看板がぶら下がっていて『小松屋』と書かれている。
「こまつや?何のお店だろう。」
鈴音さんが不思議そうに見上げている。
「んんっ?」
「どうしたの?」
「なんか聞いたことあるような気がする。」
俺はしばらく考える。日野の顔が頭に浮かび、あ、と思い出す。
「都市伝説の店だ。」
「都市伝説?」
「小松って人が、話し聞くだけの店なんだけど、来た人がみんな喜んでるって噂になってるらしい。」
「へぇー。」
「神出鬼没の店だって。」
鈴音さんが笑いだす。
「ここにあるよ。」
「明日はもうないのかも。」
「まさか。」
二人で大きな扉を眺める。
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