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医者からは、鈴音さんにも俺にも、特に問題はないと言われている。
高齢出産にはなるけれど、今は珍しくないから、とも言われた。
それでも、過去に2回、流産を経験している鈴音さんは自信を持てずにいる。
子どもがいない人生でもいいじゃないか、と俺は思う。
けれど、その言葉は鈴音さんを傷つけそうで、言えないままでいる。
かといって、子どもがほしい、という言葉もやっぱり、鈴音さんを傷つけそうで言えない。
結局、子どもの話題を避けてしまう自分がいて、鈴音さんも同じように避けてる気がして、良くない傾向だな、と思っている。
「佐々木?」
田島に呼ばれて、ハッとする。
「大丈夫か?」
「うん。悪い、ボーッとしてた。」
「珍しいな。」
「そうかな?割とボーッとしてるけど。」
「いいよな、男前だとボーッとしててもきまってるから。」
田島がニッと笑う。俺は微笑んで、ビールを飲む。
「で、佐々木は見たことある?」
「え?」
急に日野に言われて、俺は首を傾げる。
「ボーッとしてたんだと。」
田島が言うと、日野がほぇーっと変な声を上げる。
「キリッとしたままだから、ボーッとしてるの分かりずらい。」
「だよな。」
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