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Side 拓斗
「ねぇ〜!ちょっと覚えてる!?」
ブロックを持ったまま僕は固まった。
それはママが毎朝僕に言う言葉。
「さっき、何て言ったかな!?」
僕が思わず「ごめんなさい!」と言うとママの怒りは頂点に達する。
「ごめんなさいじゃなくて、顔を洗って保育園の支度して!」
僕は手に持っていたブロックを渋々崩して片付け始めた。
お休みの日だったら朝ご飯の前にテレビを見たり、絵本を読んだりしても怒られないのに。
保育園の日はいっつもこうだ。
あ〜ぁ、毎日お休みだったら怒られないのに。
そんな事を思いながら僕はブロックをすべて箱にしまうと洗面所へ向かった。
ゆっくり歩いて行くとママに「早く!」って言われるからちょっと小走りで。
僕がそうこうしている間にママはあっという間にデザートのリンゴを切ってトーストを焼きながら洗濯物をベランダに干していた。
洗面所に行くとパパが先に顔を洗っている。
僕に気がつくとパパは笑って
「拓斗は毎日同じ事で怒られてるなぁ。」
と言った。
「毎日お休みだったらいいのに。」
僕がふて腐れたように言うとパパは
「保育園は友達と遊べるから楽しいだろ?」
と笑ってリビングへ消えていった。
僕は洗面台で顔を洗いながら思った。
保育園に行くのが嫌なわけじゃなくて保育園に行くまでのこの時間が嫌なんだ。
さ、早く顔を洗って通園鞄にシールノートと給食袋を入れなくちゃ。
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