Side 拓斗

2/3
前へ
/9ページ
次へ
こんなにも「早く早く!」って言われると、まるで僕がお寝坊さんみたいだけどそんな事は無いんだ。 朝は6時半前に起きて自分で服を着替えて、それで遊んでいるだけ。 ・・・遊んでいるのがいけないのかな? 朝の唯一の楽しみは7時5分前にテレビでやる占い。 今日の僕は「色鉛筆がラッキーポイント」らしい。 パパはこの占いを見たらゴミ袋を手に仕事に行ってしまう。 「行ってきます!今日俺が拓斗のお迎えだよな?」 「そう、よろしくね。ゴミ、ありがと!行ってらっしゃい!」 ママは僕に「ご飯を食べるときはちゃんと座って姿勢良く食べなさい」って言うのに、この時間は着替えや鞄の準備をしながらトーストを頬張っている。 「ママ、占いの結果聞いてた?」 「え?聞いてなかった!」 「ママの星座は忘れ物に注意って言ってたよ。」 「忘れ物・・・ありがと!」 ママは僕がお利口にしていれば怒らない。 こんな風に毎日の占い結果を教えてあげるのも僕の役目なんだ。 ママは僕が教えてあげた結果を繰り返し言っている。 「忘れ物、忘れ物・・・なんか忘れてるような・・・」 すっかり身支度を終えたママはようやく椅子に座って僕の顔を見て 「今日はお迎えパパだからね。」と言った。 「聞いてたよ。」 僕がそう言うとママは軽く頷いて新聞に目を落としコーヒーを飲んだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加