ケンカップル、部長を捜索する

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ケンカップル、部長を捜索する

今夜はもう、ボロボロだった。  ボロボロに疲れ果てている。  それでも気を抜かずにあやみは自宅マンションにたどり着き、センサーキーにカードをかざしてドアを解錠した。  玄関に入ると、すぐさまヒールを脱ぎ捨てる。 「ただいま…」  あやみが疲れ切った低い声でそう言うと、賢いスピーカーが主人の声を感知して、玄関と廊下、それにリビングのライトが点灯した。  そういう設定にしてある。  低反発のルームシューズに足を入れてから、短い廊下を進んでリビングへ。  今週は忙しかったのもあって、そこそこ散らかっている。  社用タブレットが入っているためにずっしりと重量のあるバッグをソファの上に置くと、あやみの中で張りつめていたものがすっと抜けていくような感覚になった。  イヤリング、ネックレス、腕時計といった装飾品のたぐいをもぎ取るように外し、ダイニングテーブルの上に乱雑に放る。  それが済んだらストール、コート、ジャケットを脱ぎながらバスルームへ。  わざわざ振り返って確認はしていないが、脱ぎ捨てたものはフローリングの上に抜け殻のように落ちていることだろう。  とりあえずは気にしない。  片付けは、この後の自分に託す。  下着をランドリーバッグに放り込んで浴室に入り、すぐに蛇口をひねる。  シャワーヘッドをバスタブに向けることだけ気をつけて、水圧を全開にした。  設定温度は43℃だったけれど、お湯になるまでは20秒ぐらいの時間がかかる。 「早く、早く……」  シャワーを噴射し続けていると、やがて冷水がお湯に変わって、浴室内に温かい空気が満ちて行った。
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