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動揺したあやみの言葉を、伶が引き継いだ。
「どうして改札から出てきているんですか」
「地下鉄に向かう通路にさ、牛たんのお店があったなぁと思って」
要領を得ない回答に、あやみと伶は頭から?マークが飛び出しそうな気持ちになって、そしてそれは顔面に表われていると思うのだが、部長がそれに気が付いたようすは一向になかった。
「いつも二人にはお世話になっているし、お弁当を買ってこようと思って。朝からお肉もたまにはいいでしょ。若いしさ、君らは」
部長の言う牛たんの店はここから急ぎ足でも数分かかるうえ、テイクアウトは作りおきではなかったはずだ。
すぐに買えるとは、とうてい思えなかった。というかそもそも、
「及川部長、あと10分もしないうちに新幹線が発車します。仙台行きです。牛たんは仙台で買えます。地下にある店舗も、そもそも仙台からの支店ですし」
伶はあくまで冷静に説明する。あやみも同調して、うんうんと頷いた。
①これから仙台に行くのに
②時間がない中で
③仙台に本店のある店の牛たんを東京駅の支店で買う必要性はない
④全くない。
思わず、脳内でこのようになんの意味もなく段落番号つきの箇条書きにしてしまったほどだ。
「君たち、僕をいさめる時はいつも結束力が強くなるね」
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