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結局部長のおごりでおむすびを3人分計12個も買い込み、あやみ達は車体のエメラルドグリーンがまぶしいはやぶさに乗り込んだ。
「……」
2人掛けの席に佐倉と並んで座り、窓の外を高速で過ぎる景色を、おむすびをかじりながらながめる。
あんな夢を見た後にこんな近い距離に座られたら、どうしても意識してしまうのに。
落ち着かない思いとは裏腹にあやみはおむすびをぺろりとたいらげ、最後のひとくちをあたたかい緑茶で流し込んだ。
「……」
朝が早かったせいか、数分もしないうちに眠気が襲ってくる。
まずい。
仙台へはお客様がたのお宅への訪問と昼夜の会食がメインで、スケジュールも余裕を持って組んでいるから、この移動中にやっておくべき急ぎの仕事はないといえばないのだけれど。
横目でこっそり、佐倉の様子をうかがう。
佐倉はおむすびに手をつけず、難しい顔でタブレットをスクロールしている。画面のレイアウトの雰囲気から察するに、海外のニュースサイトを見ているようだ。
こんな真剣な顔をして仕事に打ち込んでいる人に、寝顔を見られたくない──と、あやみは思った。
なので、気合を入れて目をギン!と開き、こみあげる眠気をどうにかしようと試みる。
「……?」
隣に座る佐倉からの、いぶかし気な視線には全く気が付かなかった。
そして結局。
あやみは座席シートに吸い込まれるようにして、眠ってしまったのだった。
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