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何かほどよい硬さのものにあやみはもたれかかっている。
ちょっとドキドキするけれど、懐かしくて落ち着くにおいがした。
部長と佐倉が会話をしているらしい声が、ぼんやりと響く。
(わ、椿くん寝て……ね)
(食べて……ました)
(佐倉くん、そのまま肩を貸して……、朝が早かったから、きっと……たんだよ)
(……、はい)
ふたりとも声のトーンをおさえていたし、あやみは寝ぼけている状態だったので、会話の内容をはっきりと聞き取ることは出来なかった。
ただ、その状態がひどく心地が良くて、もう少しこのまま目を閉じていたいということしか考えられなくなり。
「椿、そろそろ起きろ」
佐倉の声で覚醒した時には、もう間もなく仙台駅へ到着する旨の車内アナウンスが流れていた。
「……!」
ばちっと、あやみは目を醒ました。
はからずも、熟睡してしまったらしい。目はばっちり開くけれど頭はまだぼんやりとしていた。
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