遠くない未来

7/9
前へ
/9ページ
次へ
 また、同じロケットを作ることをどの国も検討したが、それは結局無意味なことだった。何故なら、自らの命と引き替えの操縦者を出すことなど、どの国も出来なかったからだ。  個人の権限が世界で強まり、愛国主義なんて言葉はとっくに消え去っていた。他人や国のことなど考えず、自分を中心に物事を考える個人第一主義が世界の主流となっていたのだ。だから、任命してもきっと拒否されることや、志願者を募っても集まるはずが無いことは皆分かっていた。だからと言って、どの国も絶対的な権力を持った人物などいないため、誰かを強制的に操縦者にするのも無理な話だ。  その昔、個人を犠牲にして戦争を戦った国も、今やそんなことはできない思想の国になっていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加