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むっとする熱風に羅網(らもう)が揺れる。きらきらと輝く様に、祐(ゆう)映(えい)は目を細めた。
盆前とはいえ、連日三十五度を越える沼縁の夏は暑い。全国比でも一、二を争う最高気温を誇る(?)県内において、元々が沼地であった沼縁は湿気が多く蒸し蒸しとした日が続いている。
常に涼しい本堂ですらも、扇風機がなくてはとても寝てはおれん。寺の本堂で昼寝とは、人様が聞けば何とも罰当たりだと非難されそうだが、寺で生まれ育った祐映にとって本堂は馴染みの場所だ。物心つく頃からほぼ一日をここで過ごしている。
(雨でも降らんかなぁ)
連日の熱帯夜に寝不足気味の祐映は、照り返す陽を恨めしげに睨んだ。こんな日照り続きでも、庭の草は伸び始めている。
寺の中で唯一、暇を持て余す次男坊の祐映は、地元の大学一年生。初めての夏休みは永遠に続くかのように永く、本堂に引きこもりがちな祐映には特にすることもない。よって父の命令により寺内の雑用は全て、祐映の仕事となっている。
下男になったような気分だが、働かざる者食うべからず。役立たずでも真摯な心がけだけは持つ祐映だが、さすがにきつい日射しの中、草引きをする気力もない。「雨上がりにやります」を口実に、既に十日も草引きをサボっている。
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