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適度な言い訳もひ弱の証。我ながら情けなくもある。それでも照りつける陽は昼前だというのにかなりきつい。
「寺の子が庭で行き倒れなんて、世間体悪いやん」
「庭で行き倒れるお前のほうが体裁悪い」
「僕はひ弱なんやよ、こんな炎天下に草引きなんて無理やって」
「祐映、心頭滅却すれば火もまた涼し。ひ弱はお前の心がけの問題や。本山へ行って修行しなさい、お前ならできる!」
そう来るか。
一人、父との問答を想像し、やはり草引くべしと、ひときわ育った草に手を掛けた。本山行きは御免だ。
よそでは知らんが、本願寺では男子と生まれた者は全て師僧について修行をする。爺の兄弟も、父の兄弟も皆、僧として他家の養子に入っている。
つまりは小さくはありつつも、代々続く寺を守るため、保険を掛けているわけだ。期限切れの保険は他家で血を増やし、本家に跡取りが途絶えたら血筋を提供する。いつの時代も日本人は血筋を重んじる。
(でもね、時代は変わったんやよ。職業は自由に選べるようになったんや)ゆとり世代の祐映は反論する。
「寺の子だから坊主にならねばならん時代は過ぎた。寺の子がミュージシャンになったっていいやないかっ」
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