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主催者の友人枠として参加する打ち上げなんて、最初から結果は見えていた。ただなんとなく、彼からの誘いを断るのが、敗北を認めることと同じ意味を持っているような気がしたのだ。全部、自分のくだらないプライドを守るための行動に過ぎない。残念なやつだと、自分でも思う。
開始から一時間もしたころには、僕の精神は完全に参ってしまっていた。というのも、その打ち上げに参加していた人間のほとんどは友人と同じく、いわゆる『意識高い系』の人種であり、『意識低い系』を自負している僕からしたら、今後の夢や目標などを声高々に語り合う彼らの姿は、まさしく致死量の眩しさだった。
太陽たちの会合から逃げるために、僕は店の外の喫煙所に逃げ込んだ。二人掛けが限界の小さなベンチに腰かけて、濃い煙を半開きの口から漏らしながら、漠然と「死にたいな」なんてことばかり考えていた。
「隣、いいですか?」
やけに間延びした声だな、と思った。
「ああ、どうぞ」
「ありがとうございます。はあ、肩凝りますよね」
視界に入ってきた彼女の姿を見て言葉を失った。声色からして女性だろうということは察していたが、まさかあの写真の彼女だったとは。さっきまでいた打ち上げの席でも彼女の姿は目にしていたが、こうしてすぐ目の前に現れると、なんだかそれはそれで現実感がないというか。アニメのキャラクターの着ぐるみを見ても『本物』とは思わないのと似ている感覚だった。あくまで僕の中では、彼女はあの写真の中の登場人物でしかなかった。
「私嫌いなんですよね。ああいう集まり。次も仕事もらおうと思ったら、一応でも顔出しといたほうが得なのはわかってるんですけど」
「……なんでそんなことを僕に言うんですか? それこそ、一応僕はあいつの友人枠ですよ。別にわざわざ告げ口しようなんて思わないですけど、明らかに愚痴る相手を間違えてますよ」
「あなた、今『死にたい』って言ってたでしょ? だから、気が合うのかなあ、って。私もしょっちゅう死にたくなるんで」
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