近づく気持ち

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ホットプレートの上で、篠田が食べやすいように切り分けてくれる。 創太は取り皿に載せ、ソースとマヨネーズ、鰹節をかけた。   樹は、フォークを持って待ち構えている。 「はい、いっくん、どうぞ」 「いっただきまあす」 樹は、一口サイズに切られたお好み焼きをパクリと口に入れる。 「んまいっ!」頬を膨らませて言う樹が可愛くて、篠田と顔を見合わせて笑った。 「美味しいです」 創太も取り分けられたお好み焼きに齧りつく。 「そうか?良かった」 篠田は、ホットプレートを保温状態にして、自分もパクリと口に入れる。 「うん!旨い、良かった、ちゃんと出来て」 と笑う。 「ちゃんと出来ないときもあるんですか?」 創太は、麦茶を飲みながら聞いた。 「まあ、たまにね。でも、樹しかいないから。自分で反省するだけ」と言って笑っている。 創太は、篠田の笑顔と樹の可愛らしさに癒されていた。 「あの、いっくんのお母さんって」 「ああ、うん。嫁さんさ、元々あんまり体が丈夫じゃなくてさ」 篠田は、麦茶をひとくち飲んだ。 「樹を産んだときに、出血多量で意識不明になって」 「そうだったんですね」 創太は、悲しい気持ちになる。 「樹は、嫁さんが命がけで産んでくれた子だから。俺も命がけで育てようって思ってる」 「そうですね。いっくんは宝物ですね」  二人で、お好み焼きをパクパク食べている樹をみた。 「あ、ほら口にソースベッタリついてるよ」 篠田は、笑いながら樹の口を拭いている。  創太も一緒に笑った。
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