近づく気持ち

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あっという間に数日が過ぎた。 いつも通り高山に怒鳴られつつ、仕事をこなし、パートの小田と和やかに昼食を食べる。 仕事を終えて急いで帰り、刺繍の続きをした。 気がつくと木曜日だった。 「おつかれさま」 食堂でバッタリと篠田に会った。 何故か今週はお昼の時間があわずに、会った時は嬉しくて、創太は「あっ!」と思わず声を上げてしまった。 「元気?」 「はい、元気です」 あんなに色々話したのに、こうやって仕事場で会うと、やはり緊張してしまう。 「土曜日迎えに行くよ。また連絡する」 「はい」 ぺこりと頭を下げ、篠田と離れた。 「土曜、何?」 「え?」 高山が横で聞いていた。 「あ、えーと、ちょっと」 「なんだよ、ちょっとって」 「高山くんには、関係ないです」 創太が言うと、高山は、ムッとした顔を見せた。 「トロ川のくせに生意気なんだよ」 そう言ってどこかに行ってしまった。 高山くん、気を悪くしたかな… 創太が申し訳ない気持ちでいると、ポンと肩を叩かれた。 「高山くん、黒川くんのことが気になって仕方無いんだねえ」 小田が笑っている。  「そうなんですかね」 「うん、拗ねちゃって。可愛いよね」  アハハ、と小田に笑われて、創太は気持ちが楽になった。
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