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誕生日
樹が背負えそうな薄いブルーのリュックを買って、白いフエルトに刺繍した深緑の恐竜を綺麗に縫い付けた。
「うん、なかなかの出来!」
いっくん、気に入ってくれるといいな…
身支度を整えながら思う。
荷物をまとめて鞄に入れるとインターフォンが鳴った。
ピンポン!
「あ、はーい!今開けます」
カチャリとドアを開けると、篠田が樹を抱いて立っていた。
「おはよーございます!」
樹がぺこりと頭を下げた。
「おはよう、いっくん。さすが3歳」
創太は、笑って樹の頭を撫でた。
「今日は、ほんとごめんな。黒川くん」
篠田が申し訳なさそうに言った。
「何言ってるんですか!俺、楽しみにしてたんですよ」
創太はそう言って笑った。
3人でアパートの階段を降りて、車に乗り込んだ。
いつものように樹は自分でチャイルドシートに登り、隣に創太が座って、バックルをカチャリと閉める。
樹と創太の間に、もう一定のリズムのようなものが出来ていて、二人で顔を見合わせていぇい、とハイタッチをする。
創太は、樹のことが心から可愛いと思っていた。
「お二人さん、じゃあ出発しますよ?」
篠田が後ろを振り向いて言った。
「オッケー、しゅっぱーつ!」
樹が「おーっ」と腕をあげる。
「はーい」と創太も返事をした。
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