誕生日

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創太が風呂に入り出てくると、「まあ飲もうよ」と篠田がビールを渡してくれた。 「チビがいるとなかなか飲みに行けないからさ。今日は、嬉しいなあ」 さっきから、もう飲んでいるようで、篠田は、2本目のビールをプシュと開けた。 「いただきまーす」 創太もプシュとタブを引く。 ゴクゴク…と飲んだ。 ふと見ると篠田の喉の辺りが目の前にあり、ドキリとする。 仕事中でもないパパでもない、男の顔がそこにあった。 「黒川くんはさ、彼女いるの?」 少し酔ってきたのだろうか口調が砕けてきた。 「いえ、いないです」 「そーなの?どのくらい?」 「えーと。高校のときだから。もう五年くらい?」 創太は指を折る。もう、そんなになるのか。 高2の時。同級生の女の子と付きあっていた。 バレンタインにチョコを貰って。義理じゃないよと言われて。 特に好きな子もいなかったので、つきあった。 キスは向こうからされて。 少しだけ体を触ったけれど、なんだか怖くてそれ以上は、出来なかった。 「じゃ、童貞は、その彼女に奪われた?」 篠田は、顔が段々赤くなり、目も充血し出している。 いつの間にかアルコール度の高いお酒に変わっていた。 「えーと、童貞は…」 創太が言い淀むと、篠田が近づいてきた。 いきなり両手で創太の頬を包む。 「黒川くんって可愛い顔してるねえ」 「わっ、ちょっと篠田課長!飲み過ぎですって」 「酔ってないよぉー、酔ってない!」 そう言いながら、創太の上にのし掛かってきた。 「わっ」 zzz… …あれ?寝てる?… 朝早くから、片付けたり、掃除したり忙しかったんだろうな。 創太は、篠田を起こさないように体を退かして、寝室から毛布を借りてきて掛けた。
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