家族

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「…ろかわくん、黒川くん」 軽く揺すられて目が覚めた。 「ん、あ…おふぁようございます…」 「ごめん、樹と一緒に寝てくれて」 篠田は、申し訳なさそうに言う。 寝癖の髪と無精髭に、ついときめいてしまった。 「朝飯、パンでいいかな?」 「あ、はい、なんでも」 隣を見るとまだ樹はスヤスヤと眠っていた。 そおっと、起き上がりリビングに行く。 「あ、すいません!」 篠田がちょうど着替えている最中で、上半身の体を見てしまった。 「いや、全然。こっちこそ見苦しいオジサンの体見せてごめん」と篠田は笑っている。 「見苦しいなんて…」 創太は、ドキドキしていた。 一瞬だったけれど、綺麗な筋肉質の体で、お腹も出ていない。 「かっこいい、です…」 創太は、つい言ってしまった。 「え?ほんとに?」 篠田は、嬉しそうに笑った。 「黒川くん、あのさ」 篠田は、空き缶を集めながら言った。 「俺、昨夜、酔って変なこと言わなかった?」 「え…」 昨夜のことが脳裏によぎる。 「言ったんだ…」 篠田は、申し訳ない、と顔の前で両手を合わせる。 「いえ、そんなおかしなことは」 「何言った?」 「えーと…」 「いいよ、言ってくれて」 篠田は、身を乗り出した。 「あの、か、可愛いって…俺の顔」 そう言うと、なるほど!と篠田は、笑う。 「酒の力を借りて、本音言ったんだな、俺。ごめんごめん」   「いえ…」 創太が照れていると「パパぁ~オシッコ~」と樹が起きてきた。 「お、俺がトイレ連れていきます!いっくん行こう」 創太は、少し恥ずかしくなり、樹を連れてトイレに行った。
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