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恋人の時間
『週末、恐竜展があるんだけど一緒に行かないか?』
夜に篠田から電話が掛かってきた。
昼間のキスのことは全く感じさせない父親の声。
側に樹がいるのだろう。
「いいですね。いっくん、喜びますね」
『もちもち、そーたお兄ちゃん!きょおりゅうてん行く?』
「いっくん、こんばんは。うん、一緒に行こうね」
創太が言うと『やったあ』と喜んでいる。
『それで、さ。良かったらだけど。そのあとウチで晩飯食って、泊まっていかないか?』
篠田の声が少し緊張感を持っているのが判る。
1度泊まったことはあるけれど、あの時とは、関係が変わっている。
「あ、はい…。じゃあ用意していきます」
『うん』
いつもより言葉数が少ない篠田の緊張が創太にも移ってきて、色々考えてしまう。
『じゃ、また連絡する。おやすみ』
おやちゅみなさあい、と樹の声も聞こえて。
「おやすみなさい」と創太は、電話をきった。
…泊まるってことは、そういうことだよな…
創太は、少し緊張する。
けれど、早く篠田に抱きしめてもらいたい気持ちのほうが強く、嬉しかった。
…いっくん、恐竜展喜ぶだろうな…
樹の笑顔を思い出して、早く逢いたくなった。
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