恋人の時間

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家に帰って、篠田が仕込んでくれていたカレーを食べた。 樹は、もちろん甘口だけれど、何故か二人が食べている中辛を食べたがり、ほんのひとくちペロッと舐め「からい、いたい」と大騒ぎしている。 「ほら、だから言っただろ?」 篠田は笑って樹に牛乳を飲ませた。 「あー、かりゃかったぁ」 樹が可愛くて二人で笑った。 何気ない、こんな時間が毎日に彩りを添えてくれる。 それは、一針ずつ指す刺繍にとても似ているな、と創太は思う。 一針は小さくても、いつしか美しい作品になる。 そんな風に三人で丁寧に生きていけたら…。 創太は、その夜、そんなことを考えていた。
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