出逢い

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創太は、心配になり、彼をサービスカウンターに連れて行った。 「あの、迷子みたいなんです」 係の女性に話していると「いつき!」と男性の声がした。 「パパァー!」 彼は、ぱっと破顔する。 そちらを見ると篠田課長が立っていた。 「え!?篠田課長?」 「おー、黒川くん!もしかして君が樹を?」 「あ、はい。なんだか息子さん、コレに釣られて俺に付いて来ちゃったみたいなんです」 創太は、ボディバッグの刺繍を見せる。 「ああ、恐竜」 そう言って篠田は笑った。 二人で、サービスカウンターの女性に礼を言い、その場を離れる。 創太が「それじゃ」と別れようとすると、樹が創太のシャツをぎゅうっと握りしめている。 「あれ?あ、樹くん?離してくれる?」 「ダメー、恐竜のお兄ちゃんといっしょする」 「こらこら、樹、離しなさい」 篠田も慌てて言う。 「やだ、やだーあーん」 樹は、とうとうベソをかき始めた。 「ごめん、黒川くん、急ぐよね?」 「あ、いえ、特に急ぐわけでは、ないんですが」 創太は、食料品の入ったかごを見せる。 「食料品買って、家に帰ってメシを作る、っていう予定です」 「ほお、自炊してるんだ」 篠田は、感心したように言う。 「大した物は、作りませんけど」 創太は、少し照れて言った。 「よかったらさ」 篠田は、ニッコリと笑った。 「夕飯、一緒にどうかな?俺もいつも樹と二人だからさ。たまには、大人と食事したいんだよ」 どうかな、と言われて創太は少し舞い上がった。 「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」 創太が言うと、篠田は、ニコリと優しく笑ってくれた。 職場では見たことのない、お父さんの顔をしていた。
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