出逢い

6/7

223人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「お好み焼き好き?」 「あ、はい。好きです」 「じゃあ、お好みにするかな」  二人で並んでカートを押して歩く。 樹は、創太のシャツを握ったままチョコチョコと付いてきた。 「よっぽど黒川くんが気に入ったんだなあ」 篠田は、可笑しそうに言う。 「はあ。そうみたいですね」 創太は、樹を見る。 樹は、創太を見上げて、ニコッと笑った。 …うわ、可愛い。 創太は、思わず笑い返す。 「可愛いですね」 「そうか、ありがとう。いつもは、すごい人見知りでさ、ずっと俺にひっついてるんだけどなあ」 篠田は、苦笑いをしている。 「え?そうなんですか?」 「うん、そうなんだ。親の気持ちが分かるのかなあ」 篠田は、肉売り場の豚肉を手に取りながら言った。 「え?」 創太は、聞き返す。 篠田は、カートに豚肉を入れながら創太を見た。 「黒川くん、好きだからさ、俺」 「え?」 創太は、一瞬で真っ赤になったのだろう、篠田は、慌てる。 「いや、ごめん!変な意味じゃないよ!?部下としてってこと」 「あ、はい!わかってます!」 そう言いながら、創太は、パタパタと手で顔を仰いだ。 …は、恥ずかしい、早く治まれ… 創太が、必死になっていると、樹がキャハハ…と笑い出した。 同じように顔をパタパタと仰いでいる。 「あっちゅいねえ」  「そうだね」 アハハ…と樹と笑ううちに創太は、平常心になり、篠田も笑っている。 子供に救われちゃったよ、と創太は、情けなくも楽しい気分になった。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加