出逢い

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篠田のワンボックスカーに創太の自転車を載せ、三人で車に乗り込んだ。 樹は、自分からチャイルドシートによいしょっと登って座る。 「偉いね」 と創太は褒めて、チャイルドシートのバックルをカチッとはめてやる。 「黒川くんが樹の隣に居てくれたら安心だよ。いつも前に来たがってね」 運転席でエンジンをかけながら、篠田が言った。 「運転、出来るもん」 と樹は、少し拗ねている。 「そうなんだ、すごいね」 創太が樹の頭を撫でてやると、満足そうにニコリと笑った。 「恐竜のお兄ちゃん、くろわわくん?」 「うん、く、ろ、か、わ、そ、う、たって言うんだ」 「く、ろ、わ、…」 「そーたでいいよ」 「うん、そーた!」 「こら!創太お兄ちゃん、だろ?」 二人で、楽しく会話していると、篠田が口を挟んだ。 「いいですよ、課長、創太で」 「いや、ダメダメ!最近生意気だからさ、こいつ」 「パパうるさい!」 「こらっ!樹!」 親子の会話を聞いて創太は、面白くなり、笑ってしまう。 いつも仕事をバリバリとこなしている課長の意外な一面だった。 「パパ、かちょう?」 樹が創太に聞いてきた。 「そうだよ。パパ、偉いんだよ。課長さん」 「うわ、やめてよ、黒川くん」 篠田は、照れている。 なんだか、いつもと違って話しやすい。 本当の課長は、こういう人なんだな、と創太は、嬉しくなった。
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