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あっ、ははーん……。
段々わかってきたぞ。
ナダ、この子、「自我が無い」な?
まあ、黒髪黒瞳の中に銀髪赤瞳なんて生まれたら、まず異端児として遠ざけられるだろうし。でも、戦力としては役に立ちそうだから、殺戮兵器として戦場に送られた訳か。
そして帝国に来てからも、奴隷剣闘士として、生き残る為にひたすら人を殺し続けた。
そんな育ち方をしてたら、「自分で考えて行動する」なんて、できるはず無い。
この子は年齢こそアーリエルーヤと同じくらいだけど、中身はてんでお子ちゃま、というか、赤子同然なんだ。
そういう事情を鑑みもせず、「アーリエルーヤ」は、意志も無く、自分の為に戦って殺せ、って言っちゃったんだな。
そりゃあ、「女帝アーリエルーヤ」の為に戦って死ぬしかできなくなるよ。
でも、わたしはその「アーリエルーヤ」じゃない。
もっと、別の道をこの子に与えられるはず。
目を閉じ、数秒でめちゃくちゃ考える。
そしてわたしは、銀色の瞳をぎっと見開くと、父皇帝の脇をすり抜け、ナダの前に立った。
「お父様!」
さあ、大一番だ。間違えるなわたし。
皇帝を振り返って、ナダを指差す。
「わたくし、彼をわたくしの護衛騎士に召し抱えたく思いますわ」
皇帝が驚きで目を瞠る。ナダを見れば、何を言われているのかわからない、というのがありありとわかる、ぽかんとした顔をしている。
「彼の戦闘力は、しっかりと目の当たりにしました。この強さは、騎士となれば、大いにわたくしの身を守るのに役立つと思いますの!」
「お、おお」
やっと意識が現実に返ってきたかのように、皇帝がかくかく首を縦に振る。
「これだけ強い護衛が儂の天使ちゃんを守ってくれるなら、確かに、心強いの」
よし、第一段階クリア。
遅ればせながら駆けつけた騎士団が、暗殺者を縛り上げて連行する間に、わたしは再度ナダと向き合う。
「俺にはわかりません」
彼が、ゆるゆると首を横に振る。
「貴女の騎士になって、何をすれば良いのか」
「わたくしを守る為に立ち回りなさい。ただ殺すのではない方法を選んで」
「わかりません」
「これからは、自分で考えなさい。あまりにもまずかったら、わたくしが止めますから」
ちょっと突き放すようで悪いけど、そこはこれからスパルタ教育だ。
「自分で、考える」
ナダが赤い瞳を細めて、自分の胸に手を当てる。憂い顔もめちゃくちゃ綺麗だなオイ。
って、見とれてる場合じゃないない。
「貴方はもう『無銘』ではありません。わたくしが新たな名を与えましょう」
見てろ「アーリエルーヤ」。
これが、お前とわたしの違いだ。
「イル」
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