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「そして儂の天使ちゃんは、イルと二人でお茶を楽しんでいた訳じゃなー? 儂より先にイルとー……儂より先にー……」
おう。いじけモード全開。
好感度アップイベントその二、父皇帝とも仲良くしておかなくてはと、シフォンケーキのお裾分けに行ったら、この人、喜ぶどころじゃなかった。
アーリエルーヤが「自分より先に」イルと「二人で」お茶会をした事に、めちゃくちゃ落ち込んでおる。正直鬱陶しいですぞお父様。
……とは口が裂けても言えないから、ゆるりと微笑んでカップに紅茶を注ぐ。
「シフォンケーキは、冷めた頃にクリームと合わせて食べるのが、一番美味しいんですのよ。お父様にはそれを楽しんでいただこうと思いまして、後からお持ちしたのですわ」
嘘。というか知らん。そんなの調べた事無いわ!
しかし皇帝は、わたしの口八丁をすっかり信じてくれたようだ。ぱああーーーーーっと、目に見えて表情が明るくなる。
「何と! アーリエルーヤちゃんはそんなに儂の事を想っていてくれたのか! 流石は儂の女神~!」
ふにゃら~って。
イルとは別種のとろけ方で笑みを見せる。
おっさんの笑顔。正直その字面だけだとアレだが、この人、アーリエルーヤの父親だけあって、きっと若い頃はイルに負けない美少年だったんだろうなーって面影がある。つまり、今もかっこいい。
あー、うん。中身の年齢的にはカップルエンディングを狙うならこの人なんだけど、何せこの世界では、わたしとこの人は父娘。まかり間違っても選んではいけない。
それに、非常ーーーーーに申し訳ないが、わたしはイルへの恋心を自覚してしまった。現護衛騎士とはいえ、元奴隷剣闘士の彼を、いかにして将来大陸最大帝国の女帝になるアーリエルーヤの伴侶にするか。破滅フラグを全回避した後の事も考えなくてはいけなくなってきたんですよ。
……いやー……。
この世界に転生してきた時は、とにかく「アーリエルーヤ」と同じ道を辿らないように必死だったけど、恋がどうとか考える余裕が出てきちゃったか、わたし。
余裕ぶっこき過ぎて、地雷踏み抜いちゃったらシャレにならんから、まだまだ気をつけなくてはいけないんだけど。
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