第4章:出たなフラグ確立魔!

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 わたしが何か言うより速く、短剣の煌めきが走った。 「おっと」  ディア何某が笑みを崩さないまま、わたしから距離を取って飛び退る。 「ルーイ様に、近づくな」  相手を鋭い眼差しで睨みつけて、油断無く双剣を構えているのは、イルだった。  それを認識しただけで、その場にヘナヘナ崩れ落ちそうになる。ああーこの子、あの日に宣言した通り、本当にアーリエルーヤ(わたし)の剣であり盾であろうとしてくれてるんだ。 「おやおや、護衛騎士殿がご挨拶ですね。私はこれから皇女殿下をお守りする者として、お近づきになろうとしていただけなのに」  ディア何某がヘラヘラ笑いながら肩をすくめる。  嘘つけ。お近づきどころか、あわよくばアーリエルーヤとも契約を結んで、自分に有利に立ち回ろうって魂胆じゃろが。 「ルーイ様を守るのは、俺だけで充分だ。他の誰にも、その役目を譲らない」  ウワッ。  イル、君は自我が薄いくせに、こういう時には自信満々に好感度爆上げしてくるね?  何か、嬉しくて泣きそうになるよ。心臓ばくばく言ってるよ。  でも、ごめんね。  ここは、わたしがやらなくちゃならないんだ。 「大丈夫です、イル」  彼の腕にそっと触れて、武器を下ろさせる。 「わたくしは、彼と話があります。今は退きなさい。そして、声の聞こえない場所からわたくしを見守っていなさい」  イルがわたしを見下ろして、目を真ん丸くした。それから、怒られた犬のようにしゅんとしょげる。  ああ、こんな表情もするようになったんだ、この子。感情豊かになったのは嬉しいけど、わたしが落ち込ませてるってのは、本当に申し訳ないな。 「お行きなさい」 「……はい」  まだ納得しきっていない返答ながらも、イルは短剣を鞘に仕舞う。  そして、いつものように、瞬きする間もあらばこそ、あっという間にその場から姿を消した。  ……うーん。彼が特別とはいえ、人が一瞬で視界からいなくなる事ができる城内構造って、やばくないか? わたしが皇帝になったら、コロシアム以外にも直させる場所、沢山ありそうだぞ。  いや、今はそれよりも。 「これで今度こそやっと、二人きりだな」  ディア何某(めんどくさくなってきた)がわたしに向き直り、再びにやついてみせる。  あー、これだよ。  わたしは両手で顔を覆ってその場に崩れ落ち、腹の底から搾り出すようなめちゃくちゃ低い声を放った。 「ふじた……っ!」 「………………はい?」  鹿(ディアは鹿だからもうこれでいいや)が、目を点にして、実に間抜けな反応を示した。
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