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えっ。
あっ。
ハイ?
これがこいつの正体!?
「おっおっおっ……お前ー……!」
ケージがめちゃくちゃ情けないケージ声で、わたしを見上げる。
ほーん……悪魔だけに、モルモットになっても喋れるのか。喋るモルモット、いいな。アイドルを歌わせるより、こいつに漫談でもさせた方が、コロシアムの代わりに金取れない?
「お前今結構酷い事考えてるだろ!」
おっと。A1グランプリを考えているのが顔に出てたか。いかんいかん。
「そんな事より、教えてよ」
萌えと勢いだけで発した名前がまさか真名大当たりなんて、ラッキー棚ぼたにもほどがある、最大の破滅フラグ回避をしてしまった。
だけど、それではい良かったね、と終わらせてはいけない。
「あんた、『わたし』の事を知っているんでしょ。何でわかってんの?」
「そりゃー、お前よ、アレだよ」
ケージはぽりぽりぽり、と小さな手で頬をかきながら、遠い目をする。遠い目をするモルモット。やっぱりこれ、見世物にしたいぞ。
「オレ達は『物語に憑く悪魔』だ。世界を問わず、物語を書く人間が執筆を達成できるように、人知れず干渉するのが性分だ」
そして小さな手が、わたしを指し示す。
「ほれ、アレだ。『ネタが降ってきた』とか、『創作神のお告げがあった』とか、お前らよく言うだろ。アレはお前らがより良い物語を書けるように、オレ達がちょいと干渉した結果だよ」
えっ、ウワー……。
ケージの声で何か凄い怖い事聞いてるぞ。
つまり、「わたし」が『セイクリッディアの花輪』を書き上げたのも、こいつの干渉に無意識に突き動かされたおかげだって言うわけ?
「それが何か、話の筋がおかしくなってるから、様子を見に来たら、お前がいるじゃねーか。吃驚したわ」
いや、吃驚したわはこっちの台詞だわ。
しかし、こいつの口ぶりだと、「わたし」がアーリエルーヤに転生したのは、『物語に憑く悪魔』とやらにとっても想定外だったらしい。
今までそこまで気にしてなかったけど、そもそも、何でわたしが転生できたのかが不明なんだよね。無事にフラグ全回避できたら、そこも調べないとダメかな。
……いや、もしかしたら。
ふっと。わたしの脳裏を、嫌な予感が横切った。
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