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「ハア~~~……」
湯煙の中、溜息だか感嘆だかわからない声が出る。
白い大理石を惜しみなく使った皇城のお風呂は、まるで温泉ホテルの大浴場。大方の予想通り、獅子が口からお湯を吐いている。わかってくれこの表現。アレだよ伝わって。
ダラダラ流した汗を落として湯船に浸かると、多少は落ち着きが出てきた。ので、思考を巡らせる。
大丈夫、今のニィニナはアーリエルーヤに心酔している。話しなさい、とわたしが言えば、それに逆らう事は無いだろう。
しっかし、二人きりになれる場所だと思い当たったとはいえ、浴場を選んだのは、我ながら不用心すぎかな。流石にイルもいないだろうし、いざという時、身を守る術が何も無い。万が一にもニィニナのあの態度が演技で、本性出して襲いかかってこられたら、アーリエルーヤの細腕では対抗できんぞ。
いやっ、安心しろってばわたし!
ニィニナは良い子! 「わたし」が書いたじゃろ!
言霊にすがる訳じゃあないけど、アーリエルーヤを見た時のあの興奮っぷりは、素じゃないとできないだろう。
たぶん、『光栄です! 心臓が止まらない程度にお背中をお流ししますアーリエルーヤ様!』とか何とか言いながら、笑顔で迫ってくるに違いない。
「遅くなりまして申し訳ございません、アーリエルーヤ様。お呼び立ていただいて光栄です!」
ほーらね。声も身体もめっちゃガッチガチのニィニナがそこに
「居るーーーーーーーッ!!」
「ヒョエエエエエエエッ!?」
「はい!」
わたしの悲鳴と、ニィニナの悲鳴と、何故かイルの返事が、ほぼほぼ重なる。
湯船の中で勢い良く立ち上がってしまった素っ裸のわたし。
妙ちくりんな悲鳴をあげてすくみ上がってしまった素っ裸のニィニナ。
そしてどこから現れたのか、二人の間に双剣を構えて立ついつもの服装のイルがいた。
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