4 生物学的説明図

1/1
前へ
/13ページ
次へ

4 生物学的説明図

15d1cd3f-f869-4484-b4fc-2f23945c2c8b 図:https://19084.mitemin.net/i556146/ 技術は環境を制御して社会活動を豊かにし、 政策は文明活動を自己制御して健全に保つ、という視点の図です。  生物学では生命活動を、生物と環境の相互作用としてみるので、 この名前をつけました。 図3の〝社会学的説明図〟と同じように(たと)えると、 右手の技術は外部に向けた仕事を行い、 左手の政策は自分の身繕(みづくろ)いに役立つ、 という風に表現できましょう。 人間の技術によって変化する自然・社会環境に、 自分達自身を適応させるため、 人間自身の活動を律していくのが政策だ、 という考え方です。 近年、『政策とは人間活動の自己制御である』という見方が (まさ)ってきたのではないかと思います。 その理由は、(自然・社会科学的な)技術の発達と、 (国内・国際的な)社会の一体化です。 これにより、新たな政策の発想が生まれる二つの条件、 すなわち〝必要性〟と〝許容性〟が生じてきました。 まず自然科学においては、 我々が地球という〝自然環境の限界〟に近づき、 もはや自然は征服や支配の対象から、 我々自身の責任による保護や共生の対象に変わってきました。 社会科学においても、 若年人口増加による戦争(ユースバルジ仮説)や 少子高齢化などによる財政危機、心理技術の悪用事例など、 我々自身の〝内なる自然〟の限界という課題が分かってきました。 次に国内社会では、生活の向上と仕事の省力化、 政治の民主化や地方分権が進んでおり、 国家政策の決定において、政府がどう国民を動かすかではなく、 国民自身がどうしていくかという性格が強まっています。 国際社会でも、交通・通信あるいは軍事技術が発達し、 政治の国際化や全地球化が進みつつあるので、 国際政治においても、自国が他国をどうするかではなく、 共にどうしてゆくべきかという意識が増しつつあります。 とはいえ、個人の自己制御だってけっこう難しいのに、 社会の自己制御なんてとても大変そうです。 しかし、それを可能とする技術も現れてきました。 農業、工業技術に続く、情報、人工知能技術の発達は、 富の生産と分配に加え、人間自身の向上と活用 (あるいは人間の能力という富の増進と配分)、 すなわち自己制御を可能にしつつあります。 情報技術は『ああいう時はああする』という、 定型的な情報処理の大量迅速化によって、 様々な製品や情報の生産と分配だけでなく、 人間の知的・社会的な活動も助けてくれます。 人工知能は人間が『どうしたらいいか分からない』時も、 自ら学習して法則性の発見と利用まで行うことで、 人的業務の代行による生産と分配の効率化に加え、 人間自身の向上と活用まで可能にしうる技術です。 詳しくは後述しますが、それに応じて政策の中でも、 富の生産(安全を含む)のための技術的政策や、 富の分配(再投資を含む)のための経済・社会政策に加え、 人の向上(保健や教育)のための人的資源政策や、 人の活用(国際化や官民協働)のための行政管理政策の、 重要性が増しつつあると思います。 以上のような理由から、今ではこの図のように、 『技術には自然科学的な技術だけでなく、 人々を動かす社会工学的な技術もある。 一方で政策は、そうした社会工学的技術も用いて、 人々が自らを自己制御する活動である』 という視点が強まりつつあると考えます。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加