呪いの行方

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 その日から男は来る日も来る日も蝋燭を見続けた。  いつ消えるかな、まだ消えないかな。わくわくしながら、己の魂が具現化できるようになり術式もさらにうまくなり、運動不足解消の為剣を振り回し木にぶら下がって懸垂300回できるようになった。あまりにも暇なので薬草の勉強を始め薬学まで手を伸ばし、日に三冊は本を読んでいる。  火はなかなか消えず、十年燃え続ける特殊な蝋燭はもうすぐ底が見えている。いかん、消えてしまうとせっせと蝋燭を作った。それを数回繰り返し、なんとなく八十年くらい経った頃。 「消えろよ!」  ブチ切れて叫んだ男の前には灯り続ける蝋燭の炎があった。消えそうになることなく元気に燃えている。 「どういうことだ、まさか呪われてるのに嫁さん貰って子供まで作ったってか!? ありえねえんだけど、俺だって結婚してないのに!」  バンバンと地面を叩きつける。昔から彼はモッテモテだった。自分が女性に告白した回数は二十回以上、その答えはすべて「ごめんなさい、私リュウホが好きなの」だった。 「モテるくせに誰とも付き合わなかったのも腹立つけど、子孫残すとか許さん!」  呪われた男を好きになる女がいるとは思わなかった。とんだ誤算だ。これだからモテ男は、とぐぬぬと唸る。 「ふん、まあいい。どうせその先の代まで結婚できるとは限らない。そのうち死に絶えるだろ」  しかし自分で言っていて何だか不安になって来た。もしその先の代もモテ要素はしっかり受け継いでいて無茶苦茶子だくさんで幸せに暮らしてたらどうしよう、と。さんざん考えて結論を出した。 「ちゃんと不幸になってるか確認しに行くか」  よし、と旅支度をして蝋燭を提灯に入れると蝋燭の材料も持って森を出た。道士が使う術で空を飛び、かつて共に戦った場所、家があったところ、勤めていた城、様々な場所を探す。しかし手がかりは何もなかった。  術を使って探してみたがどうにも反応がパッとしない。おそらく強い力を引き継いでいてこちらの術を跳ね返してしまうのだろう。 「くっそ、術が強いのは相変わらずか。何やってもあいつに勝てなかったんだよな俺」  むう、と口をへの字にして諦めずに探す。勉学も体術も道士の素質も実力もすべてがちょっとだけ上。剣はかろうじて勝てた。と、思っていたが今思えばそれは手加減していたのかもしれない。いつか己を殺すため、油断させるために。  国中を探した。どうせ自分は強い呪詛の力で消えてなくなることはない。ゆっくり探そう、と隅々まで探すつもりで旅を続けた。
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