呪いの行方

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「自害……」 「じいちゃんも、親父もこれをずっと受け継いできた。じいちゃんが生まれてすぐにリュウホは死んだって。一人が寂しいなら、迷って道を見失うなら、二人で探せば良かったんだよ!」  少年は泣いている。会った事もない曾祖父の不器用さと殺すことを決意した深い悲しみを知り。どれだけ周囲が自分を虐げようと、誰にも理解されなかろうと彼の悲しい運命を知っているから今も生きている。 「本当、馬鹿だな」  ハオランは日記を閉じると己の懐にしまう。そして立ち上がった。 「半人前同士だから二人で一人前だって笑ってたのに、何で忘れたんだろうな俺たちは。正も義も探せないのは当然だ」  少年は目を見開いた。今の言葉の意味を考え、はっと何か気づいたように口を開く。しかし少年が何か言うより早くハオランは懐から術を掛けた紙の札を数枚取り出すと少年に向かって投げる。紙は不自然に舞い、少年の周囲を五芒星の形に位置づくと一気に燃える。少年から黒い霧のようなものが溢れ、ハオランの体に吸い込まれていった。 「え」  ハオランの周囲に黒い鬼火があらわれた。黒い炎は呪いの証だ。今少年の呪いを自分に移した。炎を手ですくい取ると持っていた提灯に灯す。赤く燃えていた炎は真っ黒になった。 「やれやれ、生身の肉体がないのも困りもんだな。具現化の肉体は朽ちることがないから終わりがない」  ふわりとハオランの体が浮く。少年は慌てて服を掴もうとするがすり抜けてしまった。ハオランは手の届かない高さに上ると遠くを見つめる。 行ってしまう。 「待って!」 「強くなりたいなら正しい順序で学べ、道は必ず開ける。リュウホの子孫のお前なら必ずな」  そのまま南に向かって飛んでいくハオランに少年は力の限り叫んだ。 「俺、呪い解く方法必ず探すから! アンタの事も絶対探して見せるから! リュウホもじいちゃんも親父もずっとそれを願ってたから!」  その言葉にハオランは一度止まり、ちらりと少年を見ると笑う。 「やれるもんならやってみな、クソガキ」
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