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[その4 理不尽]
別な日。この日は、アイリアと共にニルヴの個別指導を受けることになっていた。勉強に関しては二人よりも優れているのと、彼が教員志望であることから時々こうして指導している。
「今日はちょっと高度な計算問題をやっていくとしようか。これを解いてみて」
差し出されたのは、不定積分の問題。xと、eのx乗と、xの自然対数の積を不定積分したものを導出せよという問題。
レベルの高い問題で、この計算自体も上の学年で学ぶものだが、やり方についてはニルヴに教わっている。順調に二人共解いていた。
しかし、エンゼルの手が止まる。計算ミスでもしたのかと思いたくなるほどに、計算が煩雑になる。形はそれなりに整うが、消化不良になっている。
「何これ……いや、きっとアイリアにはできるのよこれも。私が数弱なだけだから……」
そう呟きながらアイリアの方を見ると、アイリアがドン引きしているのが窺える。問題用紙を凝視し、解答用紙を両手で持ち、ペンを置いている。
なんというものを出してくれたのだ。アイリアは数学力、理系分野には非常に強いはずだ。ニルヴと同じくらいか、それ以上には優れているはずなのだ。
いよいよ怪しい。これはどういうことなのだ。
「はーい、時間切れ。お疲れ様。じゃあ、答えはこれ。確認してね」
答えを確認すると、Ei(x)なるよくわからないものが。下に解説がある。「Ei(x)は、指数積分。特殊関数であり、初等関数表記は不可能」との表記が。
「おい、これは一体どういう魂胆だ?」
エンゼルは模範解答をビリビリ破きながらギンギンと睨みつけている。ニルヴは危機感を感じながらもドッキリ大成功の札を出す。
「初等関数で解けない問題ドッキリ、だよ」
「よーし分かった、グロッサーガルテンの真ん中でアイリアと一緒に一つお灸を据えてやるわ!」
この内輪揉めの件で、翌日3人は校長に叱られることになる。
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