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[その6 怪しい勧誘]
「あなた、幸せになりたいですか?」
いきなり道端で、エンゼルはいきなりこう言われた。非常に怪しい。第一声からすでに怪しい。
髪は紫と白。目はその2色を混ぜたような、明るい色。しかし質感からして、これはカツラとカラーコンタクトだろう。つまりコスプレや変装の類。
誰に似せているのだ、いったい。
「幸せになりたいかって言われても、もうなってるから……うん」
「いいや。不満が見えますよ。大丈夫ですよ、こちらに来れば救われるのです。さあさ」
腕を掴まれる。全てを察したエンゼルは何も言わずに、魔法の蝶を呼び出す。掴まれないように、腕を食いちぎってもらうのだ。
「ちょ、ちょっと待って!待ってください!助けてえ!」
「助けてって言いたいのはこっち。こういう勧誘は誘拐からの殺人または強姦って相場が決まってるのよ。明らかにそういう感じじゃない。そしたら私の貞操はどうなるか分かったもんじゃないし、父さんのお世話になりそうだし、もう何もかも嫌なことばっかりじゃない。大罪よ大罪」
何を言われているのか全く頭に入らないが、やろうとしていることを言い当てられているのは分かった。何も言えない。犯人の心情はそんなところである。
「その反応、本当にそういうことのようね。何か言ったらどうなの?」
「あ、ご、ごめんなさい」
「警察沙汰がごめんで済むわけねーだろーがァ!」
痛めつけるだけ痛めつけはしたので、手は出さない。しかし、もはやオーバーキルとばかりに言葉の暴力のラッシュをかますのであった。
この日を境に、ニュースに度々取り上げられていた少年少女誘拐事件は一気に発生しなくなったという。
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