アイリア編 天才の奇人ライフ

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 それは、授業中でもそうである。1限でも、そんなことがあった。  アイリアが暇潰しにその辺の石を魔法弾で弾き飛ばして遊んでいると、ある女子生徒が、こんなことを聞いてきた。 「1個も外してないの、凄くない?何をどうやってるの?」 「いや、別に……狙って打ち込んでるだけだよ。使ってる弾も皆が使ってる弾とそんなに変わらないし」 「ええーっ、嘘でしょ。だってほら……当たらないもん」  普通は、この生徒が実際にやってみたように、当たらない。しかし、アイリアは得意気に言ってみせる。 「弾がどんな道を通るかって、意外と正確に把握できてないんだよ。自分の感覚を詳細に、正確に捉えることで、思った場所に照準は合わせられる。あとは魔法弾は一般に重力加速度、9.8メートル毎秒毎秒の影響で直進しないこと、第一宇宙速度を超える弾なんてまず出せない、あたしでも出せないってこと、空気抵抗の影響はないこと、そのほか色々と考慮して照準を合わせると……どんなに小さな石にも一発で当てられるんだよ」  サラリと言ってのけるアイリアを前に、呆気にとられてしまったようだ。天才とは時として、このように常人には理解も及ばない域に到達してしまうものである。  それを珍しく察したアイリアが、別のアプローチをしてみる。 「例えばさ、足を真上に振り上げて、地面に足をつける時に、足が前をちゃんと向くようにするってこと、できる?」 「ふんっ!ほっ!……できないことはないけど、安定しない?」 「でしょ?意外と自分の体はどういう動きをしているか、分かってないんだよ。でもそういう動きをしてるからには、神経に感覚が伝わってる。そのインプットを正確に捉えて、対応したアウトプットをすると、驚くほど正確に動けるようになるんだよ」  分かりやすかったが、それと同時にこの女子生徒は思った。  無理だよ、と。
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