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「うーん、じゃあエンゼルが選んでよ」
「はあ!?……まあいいわ」
急に選択を委ねられるエンゼル。しかし、エンゼルはこういった急な無茶振りに慣れているし、何よりファッションに関して自信がある。
ちょっとここは、うまい具合にハメてやろう。エンゼルはアイリアに見られないように不敵な笑みを浮かべてみせる。
「あの、ここってメンズのコーナーだよ……ね?」
「そうだけど?いや、モノは試しってあるでしょ。アイリアって、背が高くてラインが細いから、メンズスーツとかも合うんじゃない?」
唐突な提案にアイリアは困惑し、顔を真っ赤にして、首と手を横に何度も振る。声にならない声が出ている。何度かこのような声を聞いたことがある。
「いやいや、そんな恥ずかしがらないで。着てみればすごいしっくり来るでしょ。ほら、ちょうどそこに女性のスタッフさんいるから採寸してもらいましょうよ」
「待って待って待ってよお!店員さん困惑しちゃうよお!そこまで言うなら着るけど店員さん困惑しちゃうよお!」
なんだかんだ、スーツを着ることになったアイリア。採寸を終えて、本当にメンズでいいのかとスタッフに何度か聞かれるも、エンゼルがそれでいいとキッパリと言うので、「そういうこと」なのだと最終的には納得された。
そして、試着の時。
「ど、どう、かな……」
「うん、ここまでは予想外だったわ。ちょっとカッコよすぎるわね。惚れそう」
それを聞くなり、アイリアは試着室の床に寝転び、悶え始めた。見ている全員が引き気味だ。
「で、どうするの?これで買わないってなったら店員にぶん殴られかねないわよ。っていうかそんなゴロゴロして買わないとか言ったら私がぶん殴る」
「買う。絶対買う。なんなら普段着にしてもいい。いや普段着はやりすぎかな、よそ行きの服かな。積極的に着ていきたいかな。うん」
あまりにも目がキラキラしているのが、エンゼルには少し怖かった。
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