1人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、そのままスーツを着た状態で寮まで戻ってくる。当然寮はざわつく。一瞬男子に見えるくらいスーツがサマになっている、というのだけならこの学校でもたまにある。そういう女子がいないでもない。
だが、よりによって1年生で一番の有名人が、急にこのような服装になると誰もがざわつくというもの。
「くうぅ……ちょっと恥ずかしい思いをさせてやろうって思ったのに、こっちが恥ずかしくなっちゃってるじゃない」
エンゼルの目論見、外れる。アイリアという人物はつくづくアウトオブコントロールだ。
さらに追い打ちをかけてくる。
「えへへ。なんかこんな風に歩いてて、皆が見てると、こう……カップルになったみたいだよね」
エンゼル、吹き出す。咳き込む。床に蹲う。そしてアイリアの胸ぐらを掴む。綺麗に整った襟がめちゃくちゃになるくらいの握力で鷲掴み。
「何言ってんだお前はァ!私は貴女とカップルなんて絶対に認めないわよ!私は……」
「いいじゃんいいじゃん。あたしとキミの仲ならもうそんなもんだって!」
胸ぐらは解放されるが、エンゼルの顔はより険しいものになっている。しかし、アイリアはそんなことはお構いなしにに続ける。
「まあまあエンゼル。力ずくでケンカをしてもまああたしには勝てないだろうけど、そんなことをする前にあたしはそれでいいと思ってるし、そんな雰囲気でいれるのが嬉しいんだよ。そこんとこ分かって、ね?」
「ハァー……もういいわ、いつか貴女のことは力ずくで圧倒してやるってことで」
口調は落ち着いているが、苛立ちや怒りは先程までよりも強くなっているのが分かる。
こんな風に振り回され、怒らされてはいるが、なんだかんだで仲のいい友達だ。
夜には自室で仲睦まじく会話を交わしながら、一日を終えていくのであった。
最初のコメントを投稿しよう!