第二話

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「だが、レイニーガン博士はどうやってこんなことを…」 日向は唸るように呟く。レイニーガンが急逝したのは何年も前の事だ。 「あくまでも仮説ですが、時限式ウィルスをデルスニクに仕込んでおいたのでしょう。一定期間経過すると、ウィルスが発動するプログラムを仕込まれていた。」 ヴィンツェンツが答える。 「…例えば、彼女の人格や能力を再現した最新のAIを起動させる。そんなウィルスを。」 「いや、坊。それは少々乱暴すぎぬか。デルスニクにそんなAIが起動できるような不自然なプログラムが入っていたら、デルスニク自身がウィルスチェックをして防衛システムをもっと早くに作動させるのではないか。」 エーアトベーレンが疑問を口にする。 「いや、エーアトベーレン。時限式ウィルスだ。デルスニクはウィルスの要素を含んだプログラムが組み込まれた状態が"正常"だとプログラムされている。事実、デルスニクは今まで正常に機能していた。時限式ウィルスはそれまでは正常なふりをしているプログラムだが、ある日突然狂ったような行動を開始するんだ。」 ヴィンツェンツは冷静な口調で返す。 「それに、だ。AI自体をデルスニクに忍ばせておく必要はない。例えば、デルスニクは1日に無限数に近いオイレンに関する情報をチェックし、処理している。そして、デルスニクが起動してからある処理を行った何千万回目かに、その時限式ウィルスが起動しておくようにプログラムしておく。これだけで良い。 デルスニクが通常業務を行っているだけでウィルスが発動し、発動したウィルスはレイニーガン博士が外部端末に隠していたAIが起動する切っ掛けを作動させる。あとは起動したAIがデルスニクをハッキングし始める。詳細は彼女のみぞ知ると言うヤツだ。」 そこまで言うと、ヴィンツェンツは息を吐いた。 「ここまでの推論が事実なら、彼女はレイニーガン博士ではなく、彼女の亡霊。レインゴーストと言う名のAI、と言うことになります。」 むぅ、と日向は腕を組む。 「不可解な点は多いが、辻褄は合うな。しかし、ヴィンツェンツの言う通り、あくまで推論だ。仮にレイニーガン博士のAIがテロを行ってるとして、目的も解らんしな。」 停電開始からおよそ30分。 未だにオイレンは闇の中だ。 「それは、本人に聞きましょう。」 ヴィンツェンツの声は、落ち着き払ったそれだった。 「レインゴーストを誘き出します。」
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