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アンジェラ=檻姫は、ビクリと体を震わせた。
奇妙な浮遊感で自分が倒れるのだと解った。
「な、に…?!」
次の瞬間には真っ暗な空間にいた。
(移動した?!あり得ないわ!)
アンジェラは合成生物。それも、廊下一帯と部屋が彼その物だ。胴と下半身が離れたならまだしも、無傷のまま景色が変わることなど一生ない。
彼の体が空間ごと移動でもしない限り。
アンジェラは周囲を見渡そうとして、首を巡らせた先にそれはいた。
目と鼻の先。女の前髪がアンジェラの顔に触れる。
仰け反ろうとするが、体が言うことを聞かない。
まるで金縛りのようだった。
「"アンジェラ"。」
アンジェラの左目に、女の右目が写り込む。
緑柱石のような緑の目。異様なのはその虹彩が3つ1列に並んでることか。
「"デルニック"」
その名前にハッとして眼球を動かせば、アンジェラの目にぐったりした少年の姿が写る。
四肢は消え失せ、首を捕まれている。
(デルスニク!)
アンジェラはゾッとした。兄弟の痛ましい姿に加え、何が起きているのかは解らないが、何が起こるかは解ったからだ。
「会いたかったわ、二人とも。」
女は嬉しそうに笑った。
(っ…やめっ)
白い手の中でデルスニクの首が不自然に曲がり、ごろりと落下した。
「また、3人で遊びましょう?」
女の声だけが楽しげに響いていた。
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