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「改めまして。アンジェラと仲良くしてくれてありがとう、リンネちゃん。私は貴女をいじめちゃうけど私とも仲良くしてくれるかしら?」
パキ、メキン。
ひときわ大きな音の後、リンネの左腕は床に落ちてしまった。
「ああ、その腕は義手だったわね。なんなら作り直してあげましょうか。」
クツクツと笑いながら、お化けだと言う人物はアンジェラの手で今度はリンネの胸や腹を圧迫する。
「…私の事、アンジェラに聞いたの?」
リンネの口調は変わらない。
それでも、残りわずかな肺の空気を使うため、声は囁くようだった。
「いいえ。教えてくれそうにないから見たの。」
「…。アンジェラに、何をしたの?」
「私が好き勝手できるように黙っててもらってるわ。」
「……。」
「納得してない顔ね。」
「私はきちんと質問してる。だから、きちんと答えてほしい。」
「んー。リンネちゃん、ノーシーボ効果って知ってる?」
「…反偽薬効果でしょ。思い込みで副作用が強めに出たり、ありもしない副作用が出たりてしまう。」
「あら博識。そうね、じゃあそれを使った実験で死者が出たのは知ってる?」
確か、とリンネは記憶を辿る。死刑囚を使った実験だったろうか。滴る音を聞かせ続け、自分の出血が続いたと思い込んだ囚人がショック死してしまったと言う。
「…!」
「あ、察した?」
なら説明は要らないわね、と笑う。
「アンジーに、酷いことしたのね?」
「酷いことをしたんじゃないわ。酷いことをされたと思い込んでもらってるだけ。」
ふと、違和感を覚えた。人としての腕でなく、人外の下半身から延びた前足とも言える手の中から感触が抜け落ちた。
「…貴方と仲良くはできない。」
白衣を脱ぎ去ったリンネが鉤爪の間合いから外れた位置に佇んでいた。
「アンジーに酷いことをしたなら許さない。あと、他人を傷つけてるのに、いちいち楽しそうな貴方は勘に障る。」
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