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「チョット痛いって。もう少し優しくしなさいよね」
「ハハハハハ、人質のクセに大口をたたきやがって!」
俺は紗菜の両手を後ろ手にロープで縛りながら奴らがいるとされる最上階へ向かっていた。だが俺は笑みが抑えきれない。今までの恨みを込めながら少し乱暴にロープを引っ張ると何度も「覚えていろ」と言う低い声で言いやがる。
日差しがさす薄暗い人気のない通路を歩いていると再びラインの通知を知らせる音が鳴った。陸からだ……
「気を付けて。二人がそっちに向かっているみたいだよ。それと最上階の方はカメラが壊されていて様子が伺えないよ」
俺と紗菜に緊張が走りさっきまでの余裕の笑みから一気に表情を硬くした。静かに響く足音……
コツコツコツ
「ん? ノブじゃねえかよ。そいつは誰だ?」
「ああ、こいつが例の脳力者の仲間だ。人質として捕まえてきた」《見るからにさえない野郎だな》
リーダー格の男とスマホをずっといじっている黒髪で無口の陰キャ女子。
「とりあえず、ノブは俺と一緒に北の展望台に来てくれ。その女はサヤカと一緒に人質の居る南の展望台に連れていく」
俺は言われるがままに、陰キャ女子に紗菜を繋いであるロープを渡すがずっとスマホを無表情で向けている。
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