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「ねえ?これ、覚えてる?」
そう言うと真子は一枚の写真を僕に見せた。
そこには彼女と僕が一緒に食事をしている様子が写っていた。初めて二人で出かけた時のものに違いない。
「いい表情してるね!口にソースつけちゃって!ふふ……智士ドジなんだから」
真子は写真をテーブルに置くと、隣に新たな写真を置いた。
「これは夜景を見に行った時ね。結構上手く撮れてる。顔も夜景もばっちりじゃん」
夜景をバックに、二人が向き合っている。
真子はさらに三枚目を差し出す。
「これは……遊園地ね。平日だから人が少なくて良いわね。でも……」
ジェットコースター待ちの列に並んでいる、僕と彼女はスーツ姿だ。
「スーツのままだと変よねえ〜。まあ、楽しかったのでしょうけど」
封筒を逆さにすると、四枚目の写真が出てきた。
「あら……」
滑り落ち、カツンと無機質な音を立てたその写真には、僕と彼女がホテルに入っていく瞬間が収められていた。
始めから真子の表情を見る余裕など無い。
一夜の過ちなどと言い訳も無い。ジェットコースターから振り落とされて、地面へと叩きつけられたようで、震えていた。硬質な写真が、今すぐ断罪のギロチンとして首をはねてくれた方がずっと楽だった。
「全部覚えがあるはずよね。後輩の女の子、だって?可哀想に……こんなドシに付き合うハメになるなんてね」
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