2H2O+O2

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2H2O+O2

襟足を刈り上げたマニッシュショート。左に3つ、右に2つのピアスを付けて初めて家に帰ったとき、母は最初こそ頓狂(とんきょう)な声をあげて驚いたものの、少し経ったら「そういうのも、かっこよくて良いわねぇ」なんて言って、ふわりと笑っていた。 良くも悪くもおおらかで、おっとりとした母。 そういう母の性質もあって、私はなんだかんだ母のことが嫌いにはなれない。 そんな母も、“憧れの制服”を着崩して家を出る事だけは、ただの一度も許さなかった。 この(ころ)学園での私には、素行不良のレッテルが貼られていた。(もっとも、それも半分くらい、自ら望んでそう見えるように振る舞った結果なのだけど…) 粗野な言動に男の子のような髪型とピアス。当然級友たちは、学園の雰囲気と相反する私をますます遠ざけた。 しかし、二年生に進級して少し経ったあたりから私の周りに奇妙な変化が起こった。 下級生たちが、やけに私に懐きはじめたのだ。 異質なものはその性質に関わらず、嫌でも目立つ。最初は物珍しさから私のことが気になっているだけだろうと思っていたのだが、同世代と比べても身長の高かった私を見上げる後輩たちの視線に、どこか熱っぽいものが含まれていることにそのうち気が付いた。 ひょっとしたら、閉ざされた女の園に生きる彼女たちの目には、私と言う存在が男性の代替品に映ったのかもしれない。 もしも、私の人生におけるモテ期がいつだったか?と尋ねられたのなら、私は迷うことなく、この高校時代のことを答えるだろう。
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