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prologue
ねぇ、覚えてる?
今日が昨日へ褪せていくのが、堪らなく恐ろしかったあの夜の連なりを。
“今”だけが永遠に間延びしていて、そのくせ前と後ろの区別さえつかなかった。愚かで青い春の日々を。
あの頃のアタシ達の目には、身を切る様な空虚も、胸を焼く熱情も、砕け散る硝子片みたいに眩く映っていたのだと思う。
散り際の陽光の様に鮮烈で、真昼の月みたいに儚い。けれど確かに、そこに在った日々のこと。
ねえ、
今でもときどき、あの日々に何かを忘れてきたような喪失感が、爪先から這い上がってくるのはあたしだけかしら?
ええ、そうね。
こんな話、あなたならきっと、鼻で笑うのでしょうね…
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