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指パッチンの音と共に、無駄に広いこの大広間の天井の暗闇から大きなドラゴンが降ってきた。あんなの見たのとない、いや現実にいてたまるか。あんなのさすがの真田でも無理に決まって……
空を縦横無尽に飛び回るドラゴン。でも対する真田は冷静だった。信じられない、外野の俺たちですら真っ青だったのに。みんなが真田逃げろ、危ないぞとそれぞれで必死に騒いでいた。でも真田はそんなのに聞く耳を持たずに鞘にはまった刀の持ち手に手をかけた。
「おじさん、やめてくれ!あんなのに勝てるわけ……」
浅野奏。クラスのムードメーカーが声を上げた。そりゃそうだ。あいつは誰にだって優しいやつだ、俺みたいな日陰者にも優しくしてくれる陰キャに優しいタイプの陽キャだ、それは多分不良相手でも変わらない。こう言う局面で先ずこう言うことを言うのは浅野だろうな。
でもベルトルトさんはフォッフォと、笑ってみせた。そして真田も、
「……心配ねえ。こいつは倒せる」
と凛とした顔と声で意思表明をした。ドラゴンの尻尾が真田を叩き伏せようとしなり飛んで来る。もうダメだ、見たくない。俺は顔を逸らして目を両手で覆った。
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