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彼等は、呟きの主に対して非難を浴びせるのみならず、犬がいかに素晴らしい人間の友人であるかをアピールした。当然と言えば当然だろう、彼等はみんな犬を飼っていて、犬に救われてきた人々ばかりなのだから。その犬を無下に扱うような人間、簡単に捨てるような人間を不快に思わないはずがないのである。
私自身のフォロワーは少なかったが、私と繋がっている相互さんの中には何十万単位のフォロワーを持つ大御所さんもいた。その結果、呟きの主が狙ったかどうかはわからないものの、そのツイはどんどん拡散され、多くのリプライがついたのである。
悲しいかな、中には元のつぶやきに“いいね”をつけている者もいた。リプライの中には犬を大事にしてほしいという意見のみならず、“犬なんかみんな焼却炉に放り込んでしまえ”だの、“あんたみたいな人がどんどん犬をいじめて減らしていってくれたら、世界は平和になるよ”だの、“犬みたいなクソな生き物は全部滅ぼしてやろうぜ”だのといった愉快犯なのか本気なのかもわからない犬アンチ者も存在していた。多くの人に拡散され、炎上するというのはこういうことなのだろう。必ずしも、まともな意見ばかりが集まるわけではない。それこそ平気で人を傷つける言葉を匿名で投げつけ、世界の片隅で陰険に笑う人間も存在するのだ。
――でも、殆どの人は募集主に非難を浴びせてる。犬を大事にしてほしい、犬の素晴らしさをわかってほしいって言ってる。
自分達の正義もまた、歪んでいるのかもしれない。こんなちっぽけな呟きを無視できず、ややきつい言葉を浴びせているのは確かなのだから。
それでも多くの人は汚い罵倒ではなく、理路整然と犬の素晴らしさをアピールしてリプライをつけたり、引用リツイートで訴えたりしているのが見て取れて、私は少しだけ安堵していた。何も分からない様子で、ただ私の傍にくっついているポミーの背中を撫でながら思う。
悪い人もたくさんいるけれど、世界は捨てたもんじゃない。
犬を愛して、守ろうとしてくれる人がこんなにもたくさんいる。
「……君達は、家族だもんね」
たまに悪戯もする。トイレを失敗することもある。うっかり子供に吠えてしまうこともあるし、真夜中に吠えてしまったこともあるのは確かだ。でも。
人間だって同じだ。いつも完璧な人なんかいない。大切なのは、多少の失敗をしても家族として受け止めること。それ以上にいつも自分達がもらっている優しさと愛情を、忘れないようにして生きることであるはずだ。
「大事な家族。それがわからない人に、犬を飼って欲しくないよね」
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