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咲紀は自分の中だけで留めようとしたことを話そうと思った。来海のことを告げ口するみたいで心が痛んだが、瞬達にこの事でモヤモヤさせたくない。
「あのね、私ね、曽根崎さんに言われるまで気付かなかったんだ。瞬ちゃんの時間奪ってるって。」
「だから、それは、」
瞬はそれは違う、と言いかけようとした時、「瞬ちゃん。聞いて。」と咲紀が言った。
「瞬ちゃんが毎日毎日、朝早くに起きてお弁当を作ってるってことに気付かなかった。曽根崎さんが、瞬ちゃんの時間を犠牲にしてるって。私もそうだと思った。ただの幼馴染が何様って。曽根崎さんね、瞬ちゃんのこと、譲ってって。曽根崎さんの方が料理とか出来るし、相応しいからって。瞬ちゃんが好きなんだって。そう曽根崎さんに言われたの。だから私、瞬ちゃんを解放しなきゃって思ったの。結局は泣いて困らせただけなんだけどね。」
咲紀は困ったような表情を浮かべた。
「あの子に広瀬と咲紀の何が分かるってのよ。咲紀を傷付けてっ。私許さないからっ。」
雛は「横恋慕のくせに。」と呟いた。
「横恋慕って…。何言ってるの。曽根崎さんが瞬ちゃんのこと好きなら仕方ないよ。私がどうこう出来ることじゃないもん。」
「咲紀…。」
雛は瞬と咲紀が両想いである事を知っているため、「横恋慕」とそう言ったのである。
「瞬ちゃんが曽根崎さんのこと好きになっても、それも仕方がないよ。」
本当は嫌だ。
「咲紀ちゃん。曽根崎さんを好きになることは絶対にないから。」
「瞬ちゃん…。」
「僕を信じて。」
瞬は真剣なので咲紀を見つめる。
「うん…。」
「さぁ。お弁当、食べよう。」と瞬は微笑んだ。「俺、唐揚げ。」と立花が唐揚げに手を伸ばす。「私、ハンバーグ。」と雛は取る。
「立花、取りすぎ。」と瞬に言われ、「あはは。」と笑って誤魔化して、おかずを頬張る。咲紀と雛は「美味しいね。」と笑いあってる。瞬は「「咲」「紀」のおむすび、咲紀ちゃんが食べてね。」と瞬は別の紙皿に置いて、咲紀に差し出す。「ありがとう。」と咲紀は微笑む。
そんな咲紀達を大人達が見ていた。
「もう大丈夫そうだね。」
紀明が安心したように微笑む。
「そうね。素敵なお友達もいてよかったわね。」
「瞬も楽しそうだ。」
「でも…。お互いの気持ちがすれ違ってもどかしいわ。」
弥生はハラハラしていた。
「僕達があの子達の気持ちを伝えるわけにはいかないしね。」
幸成が言う。
「早くお嫁さんに欲しいわぁ。」
「今はまだ僕だけの可愛い娘でいて欲しいけど、僕はいつか咲紀を瞬君に託したいと思ってるよ。」
「それまで僕達は瞬が立派な男になれるように育てるよ。ね?弥生さん。」
「そうね。それに、専業主夫にもなれるわよ。」
弥生はおかしそうに笑った。「違いないね。」と幸成も笑う。「作文の通り飲食店オーナーになってるかもしれないね。」と紀明も笑う。
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