体育祭

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ピンポンパンポーン。 「ただいまより午後の部を開始いたします。二人三脚の競技に出場する生徒は入場門に集まってください。」 運動場にアナウンスが響き渡る。 「行かなきゃ。立花。行こ。」 雛は立ち上がり立花の手を引っ張った。「うーん。立てない。」と立花は甘えるように言った。「立てるでしょ。早く行くよ。」と雛は力を入れて引っ張りあげる。 「雛ちゃん、立花君。頑張って!」 「ありがとう。こけないように祈ってて。」 「分かった。」 「行ってくるー。」 立花は水筒のお茶をグイッと飲んだ。 立花と雛は入場門からスタート地点に向かう。3組ずつ横並びに並ぶ。立花と雛は2列目の真ん中だった。 最初の組の子がハチマキを足首に巻く。「位置について。よーい。」と先生が言って耳を塞ぎ、腕を上に伸ばし、ピストルの引き金を引いた。「パーンッ。」と音が鳴り響く。 「せーの。」とハチマキを結ばれている方の足を前に出し、「いちに、いちに、いちに、」と足並みを揃えて前に進んで行く。中には足並みが乱れてよろけそうになってるペアもいた。「頑張れー!」とトラックぎりぎりの線から応援している子がいた。折り返し地点になり、ラストスパートをかけようと急いで足並みを乱したペアが前にこけた。ゆっくり立ち上がり、また前へと進む。ゴールしたペアがいたので、先生はまたピストルの引き金を引いた。 次のグループの番になり、立花は左側に雛は右側に立つ。立花は自分のハチマキを頭から取り、足首に巻きつける。立花は「雛、痛くない?」と聞く。「大丈夫。痛くない。」と雛は言う。「腰、掴んでなよ。」と雛の腕を腰に巻きつける。立花も同じように雛の腰に腕を回す。 「位置について。よーい。」と先生は言って、耳を塞ぎ、腕を上に伸ばし、ピストルの引き金を引く。「パーンッ。」と音が鳴ったと同時にハチマキのつけてる方の足を前に踏み出す。「いちに、いちに、いちに、」と言いながら、折り返し地点を目指す。咲紀は「頑張れー!」と大きな声で応援する。瞬は「立花!雛ちゃん!」と声をあげる。咲紀は「いけるよー!その調子!」と声を出す。折り返し地点につき、こけないように気をつけて、方向転換をする。なんとかこけずに方向転換が出来た。「よし!」と立花は言って、雛の腰に回してる腕に力を込めた。雛も同じように力を込める。「いちに、いちに、いちに、」とゴールまで進んだ。 結果は1着だった。立花はハチマキを外し、立花と雛は「イェーイ!」とハイタッチをして、喜んだ。「貸して。やってあげる。」と雛は手を差し出し、ハチマキを立花から受け取り、立花の頭にハチマキを巻く。 雛が立花からハチマキを受け取りハチマキを立花の頭に巻く姿が長年連れ添った夫婦みたいに見えて、咲紀は思わず「いいなぁ。」と呟いた。瞬は「何がいいの?」と聞く。 「えっと、その…。雛ちゃんと立花君が夫婦に見えて。それで…。」 咲紀は俯く。瞬に聞かれると恥ずかしい。 「羨ましくなっちゃった?」 瞬は意地悪そうに聞く。 「えっと、それは…。」 「そっか。そっか。羨ましくなっちゃったのか。咲紀ちゃんは可愛いな。」 瞬は納得したように微笑む。 「何も言ってないじゃんっ。」 咲紀は焦ったように答える。 ピンポンパンポーン。 「ムカデ競争に出場する生徒は入場門に集まってください。」 アナウンスが聞こえた後、「あっ。行かなきゃね。」と瞬は誤魔化すように言って立ち上がる。「瞬ちゃんっ。」と咲紀は怒ったように言う。「ほら。行くよ。」と手を差し出す。咲紀はその手を取る。 「咲紀ちゃん。何があってもこの手を離さないで。お願い。」 瞬は真剣な顔をして手に力を込めて言う。 「はい。」 そう言って咲紀は応えるように手に力を込めた。
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