体育祭

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入場門に着いて、人数確認を受ける。グループに1人でも欠けていると代理を立てなければならないのだ。 「ムカデ競争、頑張ろうな。」 一緒に出場する慎が瞬の肩をポンと叩いて言う。 「うん。頑張ろう。」 「広瀬君。中嶋さん。足引っ張らないように頑張るよ。」 同じく一緒に出場する晴人が遠慮したような笑顔を浮かべて言う。 「長谷川君。そんなこと言わないで。勝ち負けも大事かもしれないけど、頑張る気持ちがあればそれでいいんだよ。あとは楽しむだけだよ。ね?楽しもう?」 咲紀は笑顔で言う。 「中嶋さん…。ありがとう。」 咲紀と晴人は微笑みあった。瞬はゔゔん、と咳払いをする。咲紀は頭に疑問符を浮かべていた。晴人は瞬の嫉妬を感じ取り苦笑いをしていた。同じく一緒に出場する和希はそんな瞬を見て笑いを堪えている。慎は遠い目をしていた。和希は瞬の耳元で「嫉妬する男は嫌われるぞ?」と囁く。「うるさいよ。」と瞬は和希の足を蹴る。「いてっ。」と和希は言う。 「これで二人三脚の競技を終わります。選手に大きな拍手を。」 アナウンスが響き、大きな拍手も聞こえる。二人三脚に出場した生徒達が退場門から出て行く。 「つづいてはムカデ競争です。入場。」 入場門からスタート地点に向かう。 3組ずつ横並びに並ぶ。咲紀達は最後のグループだった。 スタートラインで最初のグループが大きな板を足につけて準備をする。先頭以外の後ろの子達が前の子の肩に手を乗せる。準備が終わったら、先生が「位置について。よーい。」と言って耳を塞ぎ、腕を上に伸ばし、ピストルの引き金を引く。「パーンッ。」と音が鳴り、それぞれの組が動き出す。5人1組での競技なので、呼吸を合わせるのが難しそうだ。二人三脚とは違い、足並みが狂えば、そこからの調整が難しくなる。最初の組がゴールにたどり着いた。 いよいよ咲紀達の番だ。前から咲紀、瞬、慎、晴人、和希の順に並ぶ。スタートラインで大きな板を足につける。先生は「位置について。よーい。」と言って耳を塞ぎ、ピストルの引き金を引く。「パーンッ。」と音が鳴った瞬間、「せーの。」と右足を出す。「せーの。」と左足を出す。それを何度も繰り返していく。「咲紀!頑張れー!その調子だよ!」と雛が応援する。立花は「皆頑張れ!お前達ならやれる!」と大きな声で叫ぶ。折り返し地点になり、方向転換をする。5人で同じ板に立ってる分、大回りな方向転換になる。咲紀が折り返し地点のコーンに当たらないように気をつける。後ろの和希が「いけるよ。」と声をかける。ゴールまで5人で進めていく。 結果は咲紀の組ともう1組が同着だった。「同着だったかぁ。」と咲紀が悔しそうに言う。 「うまく動けないところが楽しかった。」 晴人は楽しそうに笑った。 「だよね。」 咲紀も微笑んだ。 「ムカデ競争の選手の皆さん。退場。選手の皆さんに大きな拍手を。」 アナウンスが流れる。
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