体育祭

15/25
前へ
/72ページ
次へ
待機場所に戻ると、「お疲れー。」と立花が言う。「咲紀のムカデ、可愛かった。」と雛が笑う。「恥ずかしいよ。」と咲紀は恥ずかしそうにする。 次の競技、バケツリレーが始まって、バケツリレーに出てる和希を応援する。「松井君!頑張れ!」と咲紀が言う。立花が「水、零せ!」と大声で叫ぶと、周囲の観客が笑ってた。「立花君。可哀想だから。」と咲紀は言う。立花は「ははは。」と笑った。 バケツリレーを見ていると、クラスの男の子が「広瀬。借り物競争出てくれないか?」と瞬に言う。「どうかしたの?」と瞬は言う。「実は午前中の400mリレーで足首痛めちゃって。様子見てたんだけど、動けそうになくて。代わってくれない?」とクラスの男の子は言う。「いいよ。今度ジュース奢ってね。」と瞬は言う。「サンキュー。助かる。」とその男の子は言った。 「借り物競争に出場する生徒は入場門に集まってください。」 アナウンスが流れる。 「行ってくるね。」 瞬はそう言って立ち上がる。 「行ってらっしゃい。」 「好きな子って紙、引いちゃったりして。」 立花が笑って言う。 「さぁ。どうだろう。金髪野郎って紙かもしれないよ。」 瞬はそう言って入場門に向かった。 入場門からスタート地点に向かう。また何組かに分かれる。瞬は最後の組だった。 ある子は「靴」、またある子は「水筒」、「ハチマキ」、「ハンカチ」、「担任」、「英語の先生」、「バトン」、「弁当箱」、「ヘアピン」等、すぐに借りられそうな物や、「今日誕生日の子」、「妹がいる女の子」、「弟がいる女の子」、「双子の兄、又は姉、弟、妹がいる子」、「可愛い子」、「かっこいい子」、「親友」と言った困るような内容もあった。 瞬の組になった。スタートラインに立ち、先生が「位置について。よーい。」と言い耳を塞ぎ、腕を上に伸ばし、ピストルの引き金を引く。「パーンッ。」と音が鳴った瞬間、お題を持っている先生の所まで走る。 咲紀は手を組み瞬が簡単に借りられる物を引きますように、と祈った。 瞬はお題を持っている先生まで辿り着き、お題が入っている袋の中から1枚紙を取る。紙を取り出し、折りたたまれた紙を広げる。 瞬は紙に書かれているお題を見て口角を上げた。 瞬の様子を見ていた立花が「なんか笑ってね?」と言う。「なんて書かれてあるんだろう?面白い物なのかな?」と咲紀はそんなことを思っていた。立花はまさか金髪野郎じゃないよね、と思った。雛は「好きな子って書いてあるとか?」と言う。「えー。ないよ。ないない。」と咲紀は笑って受け流す。 瞬が咲紀のいる待機場所まで走ってくる。 「咲紀ちゃん。靴履いて。」 「え?」 「早くっ。ビリだとかっこ悪いから。」 瞬が急かす。瞬に急かされ、急いで靴を履く。すぐに瞬が咲紀の手を取り走り出す。 「瞬ちゃんっ。お題、何だったの?」 「すぐに分かるからっ。」 お題に沿っているか判定する先生のところまで走る。 お題判定の先生の所まで走り、瞬はお題が書かれた紙を先生に見せる。「お題の通りかな?」と先生が聞く。瞬は「はい。」と大きな声で答える。先生は正誤判定が出来る持ち手のある機械で丸のボタンを押す。先生の横にいたアシスタントの体育委員がマイクで「お題は、好きな子、でした。」と言う。その瞬間、「ふぅー。」や「ひゅー。」と野次が聞こえる。 「瞬ちゃん?」 咲紀は瞬の顔を見上げる。 「僕がずっと言いたかったこと。」 瞬は優しく微笑む。 「咲紀ちゃんが好き。」 「え?あれ?おかしいな。涙が止まらない…。」 咲紀は涙をポタポタと零す。 「咲紀ちゃん。泣かないで。」 咲紀の両頬に触れて涙を拭う。 「瞬ちゃん…。瞬ちゃん…。」 「咲紀ちゃん…。君が僕の好きな子だよ。」 咲紀は涙が止まらなかった。瞬に幼馴染の「好き」ではなく1人の女の子に向けて「好き」と言った。やっと瞬の本音が聞けた。 立花と雛は開いた口が塞がらないというような顔をしていた。 「好きな子ってお題だったんだ。」 「だから笑ってたんだ。俺達の企み、これで意味を成すわ。」 立花と雛はニヤリと笑った。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加