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咲紀が瞬に手を引かれ、待機場所まで歩いて行く。
「咲紀っ。良かったね。」
雛は咲紀を抱き締めた。
「うん。瞬ちゃんが好きって、想っててくれたんだって思うと、なんか涙が出てきて。今も止められないの。ずっと片想いみたいなものだったから。まだ返事はしてないんだけど。」
「そっか。でもさ、咲紀は両想いだったの。」
雛は咲紀の頭を撫でる。
「え?」
「立花も私も咲紀と広瀬の気持ち、知ってたから。ずっと見守ってたんだから。」
「雛ちゃん…。」
咲紀は雛に顔を埋めて泣く。
立花は瞬の肩に手を置き、「やっと言えたな。」と咲紀達を見つめながら言う。
「他に伝え方はないのかって何度も考えたけど、これが良かったのかも。」
瞬は咲紀を優しく見つめる。
「お前の気持ち、伝わって良かったな。」
「返事はまだ聞けてないけどね。」
「まぁ聞けるっしょ。」と立花は言う。「そんな簡単に言わないでよ。」と瞬は言う。
「立花。」と雛は声をかける。目配せをして合図を送る。立花は親指を立てて、アイコンタクトで「了解。」と言う。
「咲紀。仮装コンテストだよ。準備しよう。」
「うん。」
雛は大きなバッグとメイクポーチを持って、仮装コンテストに使われる仮設の更衣室まで足を運ぶ。
「瞬。お前も来い。」と立花が瞬を引っ張る。「僕、関係ないよね。」と不思議そうな顔で立花を見つめる。「関係あるんだな、これが。」と立花は瞬の腕を引っ張る。その瞬間、立花は和希、慎、晴人に目配せをした。その合図を受け取り、それぞれが行動に移す。瞬を男子用の更衣室まで連れて行く。
慎は「中嶋咲紀さんのお父様はいらっしゃいますか?」と待機場所の後ろに設置されている保護者席に呼びかける。
「僕が咲紀の父親です。何かご用ですか?」
紀明は不思議そうな顔をしていた。
「クラスメイトの穂積慎です。中嶋さんのお父様にお願いがあります。」
「どういったお願いですか?」
「そのことなんですけど…。」
慎は紀明に話していく。
和希は隣のクラスの親友、田宮凛の所に行く。
「凛。いよいよだぜ。放送部、頼んだぞ。あと、段通りを周りに伝えて。」
「任せろ。前々から準備は進めて来たから。同じクラスの放送部の子にも1枚噛んでもらってる。」
「それは助かる。じゃあ俺、そろそろ行くわ。」
そう言って行動に移す。
晴人は仮装コンテストの進行の体育委員の先輩の女の子に声をかける。
「あの。すみません。」
「どうかした?」
「中嶋咲紀の順番を1番最後にしてもらえませんか?」
「あぁ、ちょっと待って。そもそもの順番を確認するわ。えーと。中嶋咲紀さんね。」と先輩はリストから咲紀の名前を探す。「中嶋、中嶋、」と言いながら、リストの上から指でなぞる。
「あったよ。10番目だ。最後に回したらいいのね?」
「はい。よろしくお願いします。」
晴人は頭を下げる。
「ねぇ。何かあるの?」
「それはですね…。」
晴人は話していく。
凛はまず自分のクラスの子に段通りを伝える。
「皆。聞いてくれる?仮装コンテストの時なんだけど…。」
凛は説明していく。
「分かったら、隣のクラスに伝えて。全生徒だからね。」
そう言って、放送席に行く。
放送席のクラスメイトに打ち合わせ通り準備してもらっているか確認する。
「前に言った通り、放送部の子にも伝わってるよね?」
「ばっちりだよ。」
クラスメイトの女の子が親指を立てる。
「よかった。俺もここに残るから。」
凛はその場に残る。
「はい。いいよ。目を開けて。」と雛は言う。雛は鏡を差し出す。
「自分じゃないみたい。雛ちゃん、メイクありがとう。」
咲紀は受け取った鏡で自分の顔を映す。
「私にかかればこんなもんよ。」
雛は満足そうな顔で笑う。
「次は衣装ね。」とバッグから取り出す。「これ着たら教えて。」とそう言って更衣室を出て行った。
「これって…。」
咲紀は受け取った衣装見て驚いた。
立花は瞬の髪をワックスでスタイリングする。「よし。これで良いだろう。」と瞬に鏡を差し出す。
「ねぇ。なんで僕、髪をいじられてんの?それにアップパングになってる。」
「まぁまぁ。後、これに着替えて。」
立花は衣装を差し出す。
「それ、そこにあったけど、人のものじゃないの?」
「あぁ、これ、俺が用意した。とにかく、これに着替えること。着替え終わったら教えて。」
そう言って更衣室を出て行った。
「僕までコンテストに出るの?聞いてないよ。」
そう言って立花が差し出した衣装を見る。
「え?」
瞬は驚いた。
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