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咲紀達が更衣室に向かった後、慎が保護者席に「中嶋咲紀さんのお父様はいらっしゃいますか?」と尋ねる。「私が咲紀の父親です。」と立ち上がる「同じクラスの穂積慎です。中嶋さんのお父様にお願いがあります。」と真剣な目で紀明を見つめる。「それはどんなお願いかな?」と不思議そうな顔をしている。
「そのことなんですけど、中嶋さん、仮装コンテストに出るんですけど、ご存知ですよね?」
「ええ。でも咲紀もどんな衣装なのか知らないらしくて。仮装コンテストに何か?」
「あの。同じクラスの橘立花君と高木雛さん、分かりますか?」
「いつも咲紀が仲良くしてもらっている友達と聞いてるよ。」
「はい。彼らと一緒に中嶋さんと広瀬君の告白のお膳立てをしようと計画を立ててたんです。でも広瀬君、借り物競争で、好きな子って紙を引いて、中嶋さんの手を引いて。中嶋さんに想いを伝えたらしくて。でもまだ中嶋さんは返事してないらしくて。少し計画変更です。中嶋さんを驚かせたくて。花嫁さんの衣装を着て、広瀬君の元に駆け出してもらおうと。バージンロードを歩くようにお父様に中嶋さんをエスコートしていただきたいんです。これをきっかけに中嶋さんと広瀬君に幸せな関係性になって欲しくて。どうかご協力お願いしますっ!」
「要するに、仮初めの結婚式、ということかな。」
「はい…。」
横にいた弥生は「まぁ。」と驚いている。
「きっと周りはじれったかっただろうね。あの子達はお互いを想うあまりにすれ違っていて、親の僕達もやきもきしていたからね。穂積君。咲紀は瞬君に返事していないと言ったね?咲紀の気持ちを無視してまで進めることかな?」
「お父様の仰ることは分かります。こうでもしないとまたすれ違うかもしれません。長くすれ違っていると聞いてます。そんなこと、友人として嫌です。中嶋さんに、幸せになって欲しいです。どうかよろしくお願いします。」
「君の言いたいことは分かった。瞬君は知ってるのかな?」
「いえ、広瀬君には何も言ってません。」
「ちょっといいかな?僕達も1枚噛ませてもらっても?これでも瞬の親だしね。」
話を聞いていた幸成が言う。
「あ、すみませんっ!広瀬君のご両親に挨拶もしないで。勝手に話も進めてしまい…。」
慎は申し訳無さそうに言う。
「いえいえ、楽しそうな話だなと。」
幸成は笑って言う。
「瞬に何も話さないのは、状況が飲み込めず、かえってグダグダになるよ。それに仮初めとは言え、結婚式には良くないな。勿論、花嫁さんにはサプライズが丁度良いけどね。」
「瞬君と話したい。良いかな?」
「私は咲紀ちゃんと話すわ。」
「勿論です。案内します。」
そう言って紀明、広瀬夫妻を瞬と咲紀がいる更衣室まで案内する。
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